【EQADSレポ】『ツール・ド・熊野』(5/27-29)
EQADSが久しぶりにチームとして出場したUCIステージレース。格上の国内UCIコンチネンタルチームが主導権を握る展開となり苦しめられたが、海外転戦を熟してきたEQADSの山田拓海が最終ステージで意地の逃げ切り5位。同時に新人賞獲得と大いに健闘した。
↓↓↓総集映像↓↓↓
レース名・カテゴリー名・日程
「ツール・ド・熊野」(UCI2.2)
・5月27日(金)「赤木川清流コース」114㎞
・5月28日(土)「熊野山岳コース」104.5㎞
・5月29日(日)「太地半島周回コース」104.3㎞
開催地
【リザルト】
◆5月27日(金):第1ステージ「赤木川清流コース」114㎞
<第1ステージリザルト>
1位:窪木 一茂 (チームブリヂストンサイクリング)2時間31分17秒
2位:アール・ネイサン (チーム右京)トップと同タイム
3位:織田 聖(EFエデュケーション・NIPPO・Dev)トップと同タイム
35位:山田拓海(EQADS)トップと同タイム
56位:⻑川 達哉(EQADS)トップから+1分8秒
62位:川崎 三織(EQADS)トップから+1分11秒
64位:馬場 慶三郎(EQADS)トップから+1分11秒
DNF:西本健三郎(EQADS)
■フルリザルト
<浅田監督によるコメント(第1ステージ)>
U23日本代表選手の山田と川崎はいるものの、チーム全体の人数と戦力的な比較から出場を迷っていたツールド熊野であったが、選手の「走る」という意思から最終的に参加を決めた。
第1ステージは平坦基調のテクニカルなステージで集団ゴールスプリントにより決着することが多い。EQADSは格上チームの中、位置取りも容易ではないので川崎、山田、馬場は逃げの展開に挑み、長川と西本はゴールスプリントも視野に入れ、集団内で中間ポイントに絡む大筋の作戦でスタート。また集団ゴールスプリントになれば山田がスプリントの得意な長川を引き上げ、まずはトップ10入りを成績目標とした。
レースは想定より穏やかなペースではあったが、序盤に長川が落車するなどスムーズな展開とは言えなかった。中盤から主力チームにより先行グループが構成されたが、ゴール前には集団に吸収され集団スプリントに持ち込まれた。ラスト7㎞から山田が長川の位置取りと引き上げを開始するが、落車の影響からか長川は最終局面で先頭集団から脱落し、チームとしても勝負に絡むことは出来ずにレースを終えた。西本は不調により集団から遅れ小グループでゴールを目指したが途中タイムアウト。逃げ役を担った川崎と馬場は目立つ動きも無く第2集団でのフィニッシュとなり、全体的にも後味の悪い初日となった。第1ステージですでに25人が失格となったが、第2ステージからが本当のツール・ド・熊野であり、EQADSとしての今大会への参加が適切であったかの答えを、選手たちの走りで示して欲しい。
◆5月28日(土)第2ステージ「熊野山岳コース」104.5㎞
<第2ステージリザルト>
1位:レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)2時間38分50秒
2位:ネイサン・アール(チーム右京)+0秒
3位:小林海(マトリックスパワータグ)+0秒
22位:山田拓海(EQADS)+2分34秒
70位:馬場 慶三郎(EQADS)+13分4秒
DNF:川崎 三織(EQADS)規定により途中タイムアウト
DNF:⻑川 達哉(EQADS)規定により途中タイムアウト
■フルリザルト
<相川コーチによるコメント(第2ステージ)>
3日間のうち唯一の山岳ステージである第2ステージは前半と終盤に千枚田へ上る5km弱の坂、中盤には6km弱の札立峠が待ち構え、その他もアップダウンやテクニカルなダウンヒル区間などが選手に襲いかかり、総合成績を争ううえで重要なステージである。
EQADSは前日の後手にまわるような動きをしないため、各々今一度レース内でどういうアクションを起こさなくてはいけないかを確認しスタートをした。
川崎と山田は先ずは先頭集団に残ること、そこからどうレースに絡めるか、長川と馬場はその二人を良い位置で上り口へ送る動きをするようにした。
レースは最初の千枚田に坂へ入る手前の20km地点辺りに出来た20名の逃げ集団に山田が入る事ができた。
まだエース級が多くいる後ろの集団では長川と馬場が川崎をいいポジションで坂へ入れるため集団でサポートする。
山田は逃げ集団の中で次の展開に備えて距離を刻んで行き、中盤の札立峠を越えていく。
その後、エース級の追走4名の選手や少数の追走メンバーが先頭に加わったり、また先頭集団からドロップする選手などがあり集団の入れ替わりが始まる。(本来はここに川崎がいなくてはいけないが、含まれておらず)
その展開のなかで山田にパンクトラブルも起きてしまったがニュートラルサポートでの対応やダウンヒル区間を上手くこなしてなんとか先頭集団復帰。
終盤、残り20kmに再び現れる千枚田の坂ではゴールへ向けての活性化で集団のバラツキが起きはじめ、山田も徐々に先頭から遅れはじめる。
その後は少人数グループで進んでいき22位でゴールをした。
序盤にグルペット集団に入った馬場は完走。長川と川崎は下りでの落車によるタイムロスがひびき途中タイムアウト。
チームとしては山田の序盤に出来た逃げ集団に乗ったところ、展開が大きく動く後半へ残り、粘ったことは次に繋がる走りではある。脚の感触や動きは良くなってきている。
馬場や長川、川崎も完走ギリギリやDNFとなってしまったが、今日行わなくてはいけないレースの中での細かい動きが出来たところはあった。
日常のトレーニングでは得られない経験値や、大きく覚醒するタイミングがレースにはあり、彼等の年代ではその中でのチャレンジが大きく化けるきっかけになる。前へ前へ行って欲しい。
◆5月29日(日)第3ステージ「太地半島周回コース」104.3㎞
<第3ステージリザルト>
1位:ライアン・カバナ(ビクトワール広島)
2位:フランシスコ・マンセボ(マトリックス・パワータグ)
3位:中井唯晶(シマノレーシング)
5位:山田拓海(EQADS)
XX:馬場 慶三郎(EQADS)
<最終総合成績>
1位:ネイサン・アール(チーム右京)
<新人賞>
山田拓海(EQADS)
■フルリザルト
<相川コーチによるコメント(第3ステージ)>
最終日は太地町を舞台に10.4kmのテクニカルコーナーやアップダウンが続く周回を10周をまわる104kmのステージ。
総合タイム成績はトップから約10秒圏内に10名程がひしめくなか、第3ステージは2回ある中間スプリントポイントと、ゴールにボーナスタイムが設定されているため上位の選手(チーム)の激しい攻防戦は容易に予想できる。
前日に粘りの好走を見せた山田は、この日も積極的な動きを念頭に後手に回らぬようスタートをした。
スタート後にいくつか逃げは起きたが、大きく決まったのは最初のスプリントポイントを通過後(3周目に入ったところで)。
若干集団が緩んだところを見逃さずに先頭付近に位置していた山田の動きにより7名の先行グループ、また直ぐに3名の追走が加わり10名のグループが形成された。
メンバーは、山田拓海(エカーズ)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、門田祐輔(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)、西尾憲人(那須ブラーゼン)、中井唯晶(シマノレーシング)、入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)、孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)、ライアン・カバナ(ヴィクトワール広島)、横山航太(シマノレーシング)と、実力者揃いのメンバー。
逃げのメンバー内では総合トップのネイサン・アール(チーム右京)から、横山航太が46秒差、門田祐輔が1分05秒、フランシスコ・マンセボが1分12秒がのタイム差。
追走グループはリーダージャージを有するチーム右京のコントロールで30~1分のタイム差で中盤から後半へ周回を重ねていく。
終盤へ進むにつれ、逃げグループの逃げ切りたい動きと、追走グループいペースアップでの攻防が激しくなっていく。
山田も逃げグループで上手くローテーションをまわしながらいき、ゴールに備える。
捕まるか逃げ切るかギリギリまで展開が読めないなか、残り数百メートルで逃げ切りメンバーでのゴールスプリントが開始。
優勝はライアン・カバナ(ヴィクトワール広島)、山田は最後まで力を振り絞ったが5位でゴール。追走グループも数秒でゴールへ飛び込んできた。
最終日まで残った馬場も半分くらいでリタイアをしてしまったが、2日目に得られたレース内での動き方や反省を踏まえて3日目も実行に移したことは少しではあるが前進したと思う。
山田は第2ステージに続き序盤の逃げにしっかり乗り、この実力者揃いのメンバーの中で勝負所まで戦えた走りは評価できた。
ここから更に自分の得意な武器を磨き、今回のような展開になった時にも脅威と思われるような選手としてどんどん力をつけていってほしい。
また今回のような「積極的な走り」で栄誉あるツール・ド・熊野の ヤングライダー賞 ホワイトジャージを得られたことはとても良かった。
<浅田監督によるコメント:レース総括>
本来は昨年のメンバーの成績で得た出場権だが、今の戦力的に参加を迷った。
終わってみるとチェコのネイションズカップを控える山田が良いレースをしてくれたので収穫はあったが、チーム力としては実力不足が露呈された。「ツール・ド・熊野」は参加する価値の高いステージレースだと実感したが、山田以外の選手には厳しすぎた様だ。
【参考リンク】
<2022年「エキップアサダ(EQADS)」メンバー>